今回で序章のシナリオは最終回となります。
10数年前に閉鎖した自サイトでアップしていた、第1章へと続きます。
(いつアップするかは不明(汗))
暴露
(
Lothar Dieterichによる
Pixabayからの画像)
○王の謁見の間シーンの続き。
「この報告書には、第5小隊の落度が最も強調されて書かれているが、他の 小隊の活動記録が殆ど書かれておらぬ」
「どういう役割分担だったという事は書かれているがな。 これは、どういうことかな?」
『総括なのに、まだ質問が続くのか。面倒くせえな』
と思う隊長。
「それは、全体が卒なく業務を遂行できたからにございます。」
「そうか。では気になる点をもう1つ。
村役人アムドの家宅捜索は行ったのか?」
「へっ?い、いや行っておりませぬ。
あやしい素振りがありませんでしたから…」
「それが理由か?
アムドの同僚達に最近の彼の素行はどうだったのか聞き取りはしなかったのか?」
ギクッとする隊長。
「…しておりませぬ」
「そうか…。
私の元に来ている速報には、その聞き取り内容が克明に記されているがな!」
「へっ?」
寝耳に水といった表情の隊長。
「速報の報告を受けていなかったのか?
緊急性の如何に関わらず、必ず早馬で首都に一報を伝えるよう指示を出していたはずだが?」
「サミッド第2小隊長兼中隊長(トフィの上官)の報告によれば、アムドは最近やけに羽振りがよくなり、商人や職人等で気に入った者がおれば、資金を提供しているとの噂があったという」
「一介の村役人でしかないアムドがなぜそこまでの財力をもてていたのか…。
明白ではないか?」
「…報告は受けていたと思いますが、多忙を極めていたため、つい見落としてしまいました」
実はサミッドより報告を受けていたが、
「根も葉もない噂で、ただの妬みだ」
と判断し、ゴミ箱にポイして以降すっかり忘れていた隊長。
被接待に忙しく、色々業務が面倒臭かったのだ。
『こんな隊長に従っていたのか』
と情けなくなるサミッド上官。
「これは速報ではないが、こんな報告も受けている」
「村役人アムドは村に貴族や国の高級役人が訪れるたびに華美な接待を行い、やはり仲良くなった者には金品等の賄賂を渡していたという。」
隊長の顔色が一気に真っ青になる。
実は今回の巡検の真の狙いは、この村役人アムドの資金繰りルートの解明であった。
「そなた…アムドからそのような話を持ち掛けられ、金品の受取は…当然なかったろう?」
「天地天命に従ってそれは一切ありませぬ。
まだ受け取っておりませぬ」
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陰謀
(
pasja1000による
Pixabayからの画像)
○ボロを出す隊長。
隊長とアムドの面談の回想シーン。
「もう逃げられません。
刑を甘んじて受けます」
完全に観念しているアムド。
「実に残念だ。
今回我が巡検隊への協力に対し、感謝がつきない」
「しかし、完全に故意ではなかったのだろう?」
『この人、何を言い出しているのだろう』
といった表情のアムド。
「他都市の産業が人手不足なのも事実、村の若者達が職を求めているのも事実」
「そなたはそれを憂慮し、早期解決したいがためについブローカーに協力してしまったに過ぎない」
「村のしきたりを変えるのには、時間がかかるからな!
そなたは村の為に尽力してきたというのに、厳刑に処されるのは遺憾である。」
「そう言って頂けると、私の気持ちも救われますが…」
「いや、それこそ事実だ。
今回の自供も、命乞いのためにそのような証言をしてしまったのだろう?」
「えっ?いや…」
「隠さなくてもよい。
そういった点を考慮し、そなたの刑が軽くなるように持って行ってやろう」
「本当にそんなことが…」
「あの若造共のスタンドプレーも気に食わん。
軍隊の指揮系統というものを無視しおって!
むしろそちらの方が重罪だ」
「……(そんなものなのか?)」
「…そこでだ!
もしそなたの量刑が軽く済み、また刑を服し終えた暁には、私への資金協力をお願いできないだろうか?」
「…ちょっと、やりたい副業があるのでな!」
「結局そういう事かい!」ってな展開。
○唖然とする第5小隊一同。
隊長の腹黒さが自分達の不遇を招いていたと知る。
「で、結局隊長は罪に問われるのですか?」
「それは多分無いだろう。
実際賄賂を貰っていないし、アムドと共謀した証拠もないからな」
「ただ今回の巡検で彼の評価は、むしろ大幅に下がったとみていいだろう」
「ですが、我々の評価も上がりませんよね?」
「何を言う!
陛下はこうも申されていた―」
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感謝
(
Gerd Altmannによる
Pixabayからの画像)
○また王謁見の間回想シーン。
「さて、今回の巡検隊の活躍で騒動が終結したのは事実。
隊長よ、ご苦労であった。下がってよいぞ」
「…御意」
首をさげてガックリ退出する隊長。
引き続き王がある人間を呼び出す。
「サミッド第2小隊長はおるか?
近う参れ」
「は、はい!」
突如呼ばれてびっくりする上官殿。
「此度の巡検中、逐一正確で迅速な速報を送り続けてくれた事、感謝する」
「直々のお褒めのお言葉、ただただ恐縮にござりまする」
「して、第5小隊長の名は、何という?」
「トフィにございます」
「そうか、良い名だ。
まだ若いそうだが、身分の違う一般市民兵を率いて、見事に現場で証拠を押えたと速報にあった」
「これは事実なのか?」
「まさしく事実でございます。
彼らの尽力なしに、此度の事件の解決は無かったと断言できます」
「そうか、トフィ隊長の他に、新兵達を積極的にひっぱって活躍したものもいたというが、名を教えてくれぬか?」
「しいて言えば、ガトーそして…フィレンツェ!」
王の片方の眉がわずかに動く。
だが相変わらずの無表情で引き続き、
「…そうか。良い名だな。
彼らにはそれ相当の報いを与えねばなるまい。
ごくろうであった、下がって良いぞ」
「はっ!」
○フィレンツェ、ガトー、トフィの3人が震えている。
「我ら3人の名を、陛下に名乗ったのですか?」
「ああ、陛下はそなた達をいたく評価しておったぞ!」
「…光栄です」
トフィが涙ぐむ。
意外と涙腺が弱いようだ。
「見てくれる人は、見ていてくれるんだ」
ただただ感謝しかないといった表情のガトー。
「今日はこれで巡検隊も解散だが、近くそなたたちに辞令が下る。 心待ちにしていてくれ」
「これからも、よろしく頼むぞ!」
全員
「はい!」
皆のテンションが一気にあがる。
今回の行動が報われた瞬間であった。
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エピローグ
(
Greg Montaniによる
Pixabayからの画像)
こうしてフィレンツェ、ガトー、トフィはタイルアート王国兵士としての初仕事を大成功に収めた。
この後、3人を含む第5小隊の面々は士官学校で共に学ぶ事になる。
そしてその卒業式―。
首都バスタ王立士官学校、第四期生卒業式及び任命式での事。
フィレンツェ・ガトー・トフィ
「エッ!!?」
「エッ!!?」
「へ陛下…?
今何と申されました!?」
「第四期卒業生であるトフィ・フィレンツェ・ガトーをそれぞれ―」
「第3近衛師団長、第4近衛師団長及び同副師団長に任命する― と言ったのじゃ!」
「オオオオオオ…」
一同大歓声。
―こうして、三人の勇士の物語がスタートした―
【序章-完】
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